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ボトルワールド通信
奈良豊澤酒造株式会社 奈良豊澤酒造株式会社
   

奈良豊澤酒造では、今も職人らが長年培った熟練の技を生かした酒造りにこだわり続けています。つくられるお酒の8割は、「特定名称酒」に分類される高級酒。「全国新酒鑑会」では、平成2年(1990年)から5年連続、通算8回金賞を受賞するなど銘酒として高い評価を獲得しています。
第1章 今なお受け継がれる手づくりの酒造り
奈良豊澤酒造は、明治元年(1868年)の創業。140年近い伝統を誇る老舗の蔵元として、これまで数々の銘酒を世に送り出してきました。中でも「黒松貴仙寿」は、純米酒ブームの先駆けとして知られ、全国の左党の間で今なお高い人気を保っています。
奈良豊澤酒造が、全国の地酒ファンを魅了し続ける理由は、職人たちの熟練の技による酒造りにあります。吟醸酒では、今も職人が手作業で洗米。酒米を蒸す作業も、昔ながらの甑(こしき)を使用。さらに酒の風味を左右するといわれる麹造りでも、蒸し米に種麹をまぶす作業が職人らによる手作業で行なわれています。
「麹のできのよしあしは、風味や味など最終的な品質にも大きく影響します。当蔵では、創業以来一貫して麹造りにこだわり続けてきました。例えば大吟醸や吟醸酒の麹は、低温長期発酵に耐えられるよう製麹時間を長くして、硬く締まった麹になるよう管理しています」(藤沢杜氏)

第2章 品質へのこだわりと情熱
伝統の酒造りを大切にまもる一方で、奈良豊澤酒造は新しい取り組みにも意欲的に挑戦しています。2005年10月には、老朽化が進む蔵を全面改装。新蔵での酒造りが始まりました。「全面改装といっても、機械化できるところは
機械化して作業効率を高めるのが目的。手作業で運んでいたところに大がかりな搬送装置を導入したり、装置の配置やレイアウトひとつにこだわってムダを省きながら、一方では品質に直接影響のあるところは創業以来受け継がれた手づくりを今も残し、品質向上につながるよう工夫しました。
より良いものをよりやすく提供したいという思いは、今も変わることがありません」(藤沢杜氏)
例えば麹室。壁や天井一面に秋田杉の杉板が使われ、室に入るとほのかに漂う杉の香りが酒造りへの情熱をかき立ててくれます。
「麹室でなによりもこだわったのは、蒸し米に種麹をまぶして成長させる時に使う床です。今では多くの酒蔵がコンピュータで温度管理していますが、当蔵では今も職人が手で混ぜて蒸し米の温度調節を行なっているんです。麹は
生き物。きれいで美味しい奈良豊澤酒造の酒は、こうした麹造りへのこだわりから生まれているのです」(藤沢杜氏)
麹室は、奈良豊澤酒造の酒造りの生命線でもあるのです。
「麹室の秋田杉は、節のない杉板だけを選りすぐり、何年も前から天然乾燥させたものを使っています。無節の杉板を使うのは、節があると乾燥して縮んだ時にそれが抜けてしまって、断熱効果を維持できなくなるからなんです」(藤沢杜氏)
「酒造りは、自然のものを素材にするので、毎年同じ品質でつくり出すのがたいへん難しい。気候も変わるし、米の作柄水の状態も影響する。そんな中で毎年変わらぬ味のものを作り上げるには、人の和(チームワーク)が最も大切なんです」(藤沢杜氏)

新蔵には、しぼりたての新酒をはじめ、銘酒を数多く取り揃えた直営の販売所も設けられています。試飲もできるので、直接訪ねてみるのも一興かもしれません。
第3章 酒造りに情熱を注ぐ「現代の名工」
藤沢杜氏は、昭和10年生まれの今年71歳。酒造りに携わるようになってもう50年あまりがたちます。平成14年には、その卓越した技能が認められて「現代の名工」に選ばれました。ちなみに「現代の名工」に選出された杜氏は、全国的にみても10数人しかいません。
「だれからも愛される酒は、一人の力だけでつくれるものではありません。まわりの大勢の人たちの支えがあるからこそ良い酒造りができる。特に私が大切にしてきたのは、販売を担当する人たちとの協力です。伝統の酒造りの技を磨く一方で、販売を通じてお客様の声に耳を傾け、時代とともに変化するお客様の嗜好にあった酒造りをめざしてきました」(藤沢杜氏)
そんな酒造りの考え方を象徴するお酒が、すでに紹介した「黒松貴仙寿」です。昭和40年代に発売された「黒松貴仙寿」は軽くて飲みやすい独特の味が好評を博し、純米酒ブームの先駆けとなって奈良豊澤酒造の名を広く全国に知らしめました。「現状に満足すれば、進歩はなくなります。これからも手づくりでしかできない酒造りにこだわり、たゆまぬ努力を重ね、美味しいお酒を日本中のファンの方々に味わっていただきたいと思っています」(藤沢杜氏)

【杜氏:藤沢忠治】
但馬杜氏の郷、兵庫県美方郡香美町生まれ。17歳で酒造りに携わり、杜氏歴は37年。昭和54年(1979年)、奈良豊澤酒造
の現代表取締役社長豊澤安男に出会い、杜氏として招かれる。平成14年11月には、「現代の名工」に選ばれ生労働大臣賞を表彰される。
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